styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

2016-01-01から1年間の記事一覧

「まぼろし」 途方に暮れる妻シャーロット・ランプリングの美しい憂い 感想

熟年夫婦だからこその色香と淋しさ バカンスを過ごす海辺の別荘で、いつもの風景から当然消えた夫の姿。激しい動揺や取り乱した姿を晒し続けない妻の気丈な振る舞いが逆にリアルに感じる。 夫の替わりはいないと強く思う絆の深さが印象的なのはベッドシーン…

コクトー原作・メルヴィル監督 「恐るべき子供たち」 恐るべき姉の愛 感想

コクトーの美学を目の前に再現する ジャン・コクトーの作品「恐るべき子供たち」の映画版は、ヌーベルバーグのメルヴィルが監督した。コクトーの恋人が弟ポールを演じ、コクトー自身がナレーションをすることで、原作者との強い結びつきをアピールしている。…

「世界一美しいボルドーの秘密」 ワインは恋、ボトルはステータス❓ 感想

ワインは嗜好品なのか?芸術品なのか? 近年のグローバル化に中国資本が存在感を表わすにつれて、ボルドーワインをめぐる、世界市場の過剰反応が問題視されている。翻弄されるフランスのシャトーや生産者たちの声を拾いつつ、ワインのもつなみなみならない魔…

「ミッドナイトインパリ」 恋ってこんな風にしたい妄想が満載 感想

夢見がちな婚約者の見せる奇行 婚前旅行できた花の都パリ。成功した脚本家の婚約者(ギル)に資産家のお嬢様もなんとなく不思議なオーラを感じている様子。 そしてついに、馬車がギルを迎えに来て、憧れの古き良きパリへタイムスリップさせてしまう。パリが…

「プライドと偏見」 イギリス文学的大人の恋愛の世界にはまる 感想

美し過ぎる、イングランドの風景に再現された世界観 18世紀、女性の立場は低く、中流階級では娘が身分の高い男性に見染められることを望む父や母の姿がしばしばみられた。 その時代背景のなか、主人公のエリザベスは、見事、高貴なお方を射止めることに成功…

激しく、暗い、恋の映画 イザベル・アジャーニ 「カミーユ・クローデル」 感想

美し過ぎて怖い女優、若き日のイザベルアジャーニ演じる「カミーユ・クローデル」。不倫の恋の果てを描いた作品の感想です。

問題ガール?モノ言うイラン女子を描いたアニメ 「ペルセポリス」 感想

ヴェールで隠しきれないマルジのバイタリティー イランに生まれた女の子マルジは、リベラルで反体制的な親や祖母の影響で自由闊達に成長していた。快活で自分の意見をはっきり持っている彼女だったが、イラン王政が倒れ、その後の宗教的な政治によって人生を…

大人の魅力といえばこの女性、ファニー・アルダンの美 「日曜日が待ち遠しい!」 感想

フランソワ・トリュフォー監督 1983年 フランス ファニー・アルダン主演 トリュフォーの遺作、美人秘書ファニー・アルダンが活躍 セクシーな美脚、唇、でもどこか男性的で、女から見てもハンサムなファニー・アルダン。サスペンスで描けばクールでエロティッ…

「パリ、18区、夜。」 断片だけどつながっている大きなストーリー 感想

パリ北部、18区は移民の街 この作品は1993年に作られている。この前後にはイスラム教女性のスカーフ着用事件など移民政策における他文化に対する問題点が議論になっている。 パリ北部18区というと、バルベスやシャトールージュなどの地下鉄駅があり、アフリ…

「コーラス」 ジャン・バティスト・モニエの天使の歌声が聞きたくて 感想

学校一のワルからコーラスのソリストに ジェラール・ジニョ演じる教師が赴任した学校では、やんちゃ盛りの男の子たちが問題ばかり起こしている。中でも一番のワル、問題児モランジュ(ジャン・バティスト。モニエ)に手を焼く。 しかし、モランジュは天使の…

ミヒャエル・ハネケ監督 「ピアニスト」 見終わって傷つく 感想

貞淑な女教師と美形学生のいびつな恋 厳しい母親に管理されて大人になった女性が、お堅いピアノ教師になる。いわゆる毒母の影響で、女性としての成長を抑えられてしまった悲しい主人公をイザベル・ユペールが演じきっている。 その彼女を誘惑する男子学生を…

「鑑定士と顔のない依頼人」 過去から動き出した時間 感想

敏腕鑑定士の目を欺くなら 明らかに怪しい電話依頼を受けたオークションの腕利き鑑定士バージル。罠だとわかっていても、姿を見せない「顔のない依頼人」に憑かれるように惹かれていった。 広場恐怖症というパニック障害を持つ依頼人、クレアは実はブロンド…

感想 「風にそよぐ草」 感情があるから、人間らしい 

感情的な人間であり続ける 偶然が支配する小さな世界で起こるボーイミーツガールの物語が、初老の男女だとどうなるかが描かれた面白い作品。「風にそよぐ草」では、かたくななこだわりや、素直になれないところもリアルに描かれている。 特に印象的なのは、…

父・子の絆ができるまで 『ヴェルサイユの子』 感想

「ヴェルサイユの子」(原題 VERSAILLES) 2008年フランス ピエール・ショレール監督 母に捨てられた子どもと、一人の男が心を通わせていく。生き方を忘れた彼が、弱い命を守るために再び立ち上がる姿が美しい。 父なる者になっていく、一人の男 フランスの…

移民の子どもたちを描く「身をかわして」 感想

移民の子どもたちの日常を描く 主人公である移民の子が通う学校では、フランス文化を大切にした授業が行われている。発表会では、マリヴォーの演劇を行うことになるが、移民の子は興味があまり持てない様子。しかし、白人のフランス人の女の子と一緒に劇の練…

「イカとクジラ」ノア・バームバック監督の自伝的映画 感想

ノア・バームバック監督の自伝的作品「イカとクジラ」の感想。子どもにとって親は絶対的存在という時期がある。しかし、あるとき、親が完ぺきではないということに気づかされるタイミングがある…

仏サンリスの街が舞台「セラフィーヌの庭」 感想

サンリスのセラフィーヌ、純粋さゆえの苦しみ フランス、パリから北部に40キロ、サンリスには中世の街がそっくり残っている。旧市街は、石畳の細い路地。そのサンリスを舞台にした映画が「セラフィーヌの庭」だ。 セラフィーヌは、20世紀の女性画家で、自然…

ドキュメンタリー「キミの心のブラック・ピーター」 を見た

www.nhk.or.jp 子ども時代の思い出と差別 「日本賞」教育コンテンツ国際コンクール受賞作品として、テレビ放送を見た。 オランダでは、シンタクラース(聖ニコラス)を迎え入れるお祭がクリスマスシーズン到来とともに行われるそう。そのお供が顔を黒く塗っ…

「エディット・ピアフ 愛の賛歌」 歌姫の人生、光と影 感想

暗闇から響く歌声が耳から離れない 貴方の燃える手で、私をだきしめて…という、エディット・ピアフの「愛の賛歌」を翻訳した日本語の歌詞(岩谷時子作)は叙情的で詩的で美しい。本来は、もっとピアフの激情や生い立ちの厳しさを感じさせるような内容になっ…

マチュー・アマルリック主演 「潜水服は蝶の夢を見る」 感想

映画『潜水服は蝶の夢を見る』オフィシャルサイト もがきながら、かっこ悪くても生き、そして蝶になる 世界的に有名なファッション雑誌の編集者、ジャン・ドーは、申し分のない成功者の人生を歩んでいた。しかし、ある日、息子とドライブ中に脳梗塞で倒れ左…

オリヴィエ・アサイヤス監督 「夏時間の庭」 感想

www.allcinema.net 映画|夏時間の庭|オフィシャルサイト 家は風景画のように変わらない この作品は、印象派の画家達が愛したパリ郊外の小さな町、ヴァルモンドワを舞台にしている。そのため、夏の日差しをいっぱいに浴びた家と庭の風景が、美しくゆったり…

「アメリ」はサントラが命 感想

「アメリ」はかわいい&おしゃれ!にご用心 幼いころから妄想癖のあるアメリ・プーランは人と付き合うのが苦手な変わり者だが、恋をすることで勇気を持てるようになる。アメリの成長とラブストーリーの両方が見るものをほんのり柔らかい気持ちにさせてくれる…

チャップリンが一人二役 「独裁者」 感想

独裁者と床屋の二役で笑わせる ユダヤ人街に暮らす床屋のチャーリーが記憶喪失になっている間に、世間ではユダヤ人弾圧・領土拡大のための戦争が広がっていた。それはチャーリーにそっくりの独裁者、ヒンケルの台頭によるものだった。 いつも通りの、とぼけ…

エマ・ワトソンがフェミニズム運動!大人になった魔法少女

国連スピーチをなしとげた女優魂 ハリー・ポッターの可愛らしいけどちょっとおませで生意気というはまり役から、美しくチャーミングな大人の女性に変貌を遂げたエマ・ワトソン。 その彼女が、2014年にUNウイメンの親善大使として国連でスピーチをしていた。 …

レティシア・カスタ主演 「歓楽通り」 感想

運命の女性の幸せを願う運命 娼館に勤めるプチ・ルイがついに見つけた運命の女性がマリオン(レティシア・カスタ)。尽くして尽くして、それでも自分の手に入れるのではなくその幸せを願う。 パトリス・ルコントの表現する男の愛のありかたには、もどかしく…

冬の旅 感想

アニエス・ヴァルダの「冬の旅」 【映画チラシ】冬の旅 アニエス・ヴァルダ サンドリーヌ・ボネール 出版社/メーカー: moviestock2 メディア: おもちゃ&ホビー この商品を含むブログを見る www.allcinema.net 寒さ・厳しさ・寂しさをありのままに放り出す …

3.11.に思い出す、 「TSUNAMI 津波」 の衝撃

TSUNAMI 津波 [DVD] 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ 発売日: 2008/06/11 メディア: DVD クリック: 38回 この商品を含むブログ (6件) を見る 津波の恐怖を私は知らない 5年前の3.11.という日が来なければ、海辺の町々の穏やかな日常は今も変わら…

下北沢B&B 佐々木敦著 「ゴダール原論」イベント レポート

B&Bでゴダールの今昔を語る スピーカー:佐々木敦氏、松浦寿輝氏 要約:ゴダール「さらば、愛の言葉よ」を通して描かれた佐々木氏の「ゴダール言論」について松浦氏の書評を聞きながら、二人がゴダールの今昔について論じる。 ゴダールとは何か、批評の有…

ブランカニエベス 感想

12月7日(土)公開 『ブランカニエベス』日本版予告編 白雪姫?女闘牛士?ザクッと痛いおとぎ話 ブランカニエベスはスペイン語で白雪姫という意味。作品は、白雪姫のストーリーをベースに、モノクロに字幕で展開する。 そこにきて、ヒロインの闘牛士姿は、異…

私の好きな映画

ヨーロッパ映画が好き フランスを中心にヨーロッパ映画が好きです。 学生時代は映画100本ノートの課題をこなし、小さな劇場に足を運ぶ日々。 監督別に映画DVDを見るのが好き、アート系映画が好き、文学的な映画が好き。 現在は、主にTSUTAYA、Hu…