styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

哀しい愛を抱えて クレール・ドゥニ 「ガーゴイル」 感想

愛は哀しい 非情な病に悩む二人 情事の際に発動するカンニバリズムを持つ病が、現代社会にあるとしたら…。 ヴァンパイアのように哀しい宿命を持つ、病に侵された男女のそれぞれの生き方を描いた問題作。 この病の持つ、愛するほどに愛せない苦しみ。 愛する…

「黒水仙」 高潔で禁欲的な尼僧界のスキャンダル 感想

ナルシシズムを感じる高潔さを憎む 水仙は神話のナルシスにも通じる、うぬぼれ屋のイメージがある花で毒もある。黒水仙なんてものは存在していないのだけれど、ブラックなイメージが全開の作品だ。 ヒマラヤの奥地の教会に赴任してきた尼僧たちが、孤独と宗…

フランス映画祭レポート 「ショコラ」 2016.6.26

「ショコラ!(仮題)」 Chocolat - Bande-annonce あらすじ 19世紀末、大衆芸能文化が花開くパリで大成功をおさめたサーカスの目玉、黒人と白人の道化師のコンビ。ショコラ(オマール・シイ)はこの黒人の道化師のことだ。 落ち目の道化師フティット(ジェ…

「フレンチなしあわせの見つけ方」 結婚してても恋しているのがフレンチ 感想

だから 結婚してる意味がある 誠実で気の合う夫(イヴァン・アタル)と、可愛い息子を持つ主人公(シャルロット・ゲンズブール)。自分の仕事も大切にして、何不自由ないパリの一家の日常を切り取った作品。 結婚していても、目移りすることはある。この作品…

包容力のある恋に癒される 「ナタリー」 感想

キラキラな恋人からダサい恋人へ 見た目は関係ない恋の引力 絵にかいたような美しい恋人同士が、パリのカフェで出会い、うらやましくなるような生活を送っている。 それが一転、突然の死別。という最悪の結末を迎える。この物語はそこから始まる。 感情を押…

「シェルブールの雨傘」 ドヌーヴの美声・美貌に酔う 感想

ドヌーヴの美しい額が初々しい フランス女優の大御所としての地位を不動に固めたカトリーヌ・ドヌーヴのうら若き21歳の時の作品が、代表作「シェルブールの雨傘」。ミシェル・ルグランの音楽をつけた、ジャック・ドゥミのテンポの良いミュージカル映画が面白…

「ランジェ公爵夫人」 踏み越えることのない垣根がもどかしい 感想

公爵夫人の優雅な誘惑 なんだろう、見終わった後の遠い目になるかんじ。 ジャンヌ・バリバールはたおやかで上品で、でもえげつない公爵夫人を見事に演じきっていた。そして、ギヨーム・ドパルデューの将軍も武骨で繊細で、また駄々っ子のようで最高だった。 …

「エコール」 見てはいけないものを見てしまった気分になる 感想

ルシール・アザリロヴィック監督 2004年 フランス マリオン・コティヤール出演 原題:Innocence(無垢)に込められた意味 日本名「エコール(学校)」の響きと原題「イノセンス(無垢)」ではとらえ方が異なる作品だ。 少女を集めて美しく育て上げる学校で起…

誘惑する眼差し メラニー・ロランの虜になる 「PARIS」 感想

いくつもの人生がそこにある、パリの群像 セドリック・クラピッシュが描く、パリを中心にした群像劇。いくつもの人生のリアルな痛みが交差する。 死に至る病を患う弟(ロマン・デュリス)を気遣う姉(ジュリエット・ビノシュ)を軸に展開するストーリーは、…