「エコール」 見てはいけないものを見てしまった気分になる 感想
ルシール・アザリロヴィック監督 2004年 フランス
原題:Innocence(無垢)に込められた意味
日本名「エコール(学校)」の響きと原題「イノセンス(無垢)」ではとらえ方が異なる作品だ。
少女を集めて美しく育て上げる学校で起こる出来事を映しているから、エコールでも間違いないのだが、描かれている主題は少女の無垢さの喪失である。
6歳から11歳までの少女はさなぎから蝶に生まれ変わる時期のように繊細で、変化も大きい。まるで子供だったあどけない女の子が、一瞬女の顔に変わる年頃になる。
森の中のおとぎ話の世界のように、可愛い、きれいといった言葉だけで表現しきれない成長の怖さを感じる。この作品の中でも命を落としてしまう女の子がいるように、好奇心とのバランスが危うい存在なんだと思う。
一部では少女愛好家の好奇の目にさらされる作品となっているようだが、それは、この作品の中でバレエを見に来ている客のようなものだと思う。そしてそれが、こちらに罪悪感を感じさせるのだろうし、見てはいけないものを見てしまった感をだしているのだろう。
きれいな少女たちが楽しく踊っているだけの美しい世界は、存在することが既に罪なんじゃないかとさえ思える。見るなといっても、見たくなる。でも、見てはいけない気がする、そんな不思議な作品。
日本語タイトルのような素朴な作品ではないし、おしゃれ映画とかでもないのでご用心。
マリオン・コティヤールが演じる先生も、美しくてミステリアスで、なんか怖い。