「アメリ」はサントラが命 感想
「アメリ」はかわいい&おしゃれ!にご用心
幼いころから妄想癖のあるアメリ・プーランは人と付き合うのが苦手な変わり者だが、恋をすることで勇気を持てるようになる。アメリの成長とラブストーリーの両方が見るものをほんのり柔らかい気持ちにさせてくれる。
上目づかいに、にっこりとした口元のヒロインといえばモテそうなものだが、オドレイ・トトゥ演じるアメリには違和感を感じる。生い立ちからして、普通なんだけど、普通じゃない、奇抜な趣向をもっている。
かわいくておしゃれな外見の一方、ジャン・ピエール・ジュネ監督のアメリ以前の作品にみられるダークさが内面に抱え込まれているようだ。
また、作品の主な舞台になる、パリのモンマルトル周辺といえば、20世紀前半各地のアーティストたちの集う地域であり、ボヘミアン文化の象徴の地になっている。アメリの効果でモンマルトルのカフェには日本人観光客も増えたそうだ。
実際は、パリの中ではどちらかというと庶民的で猥雑な場所でもある。アーティストの集う酒場や、キャバレーなどが今でも残り、夜は治安が悪く、女子が一人で行くときは周囲に注意が必要である。
かわいい&おしゃれ=アメリという図式は現実には即さない。アメリを夢見てモンマルトルへ行くときは昼間に行った方が賢明だ。
ヤン・ティルセンの作る「アメリ」の音楽
アメリの魅力はサントラにある。監督がほれ込んだヤン・ティルセンの音楽世界がテンポ良く映画のリズムを作り出している。同時に、トイピアノの響きはノスタルジックで好奇心をくすぐる。
"Le fabuleux destin d'Amelie Poulain" Montage
「アメリ」は基本大人同士のラブストーリーなのだが、甘くないのが面白い。おじいちゃんのようなアンドレ・デュソリエのナレーションに、ヤン・ティルセンのサントラが作品を引き締めドラマチックにしている。淡々とした男声のナレーションと、特異なヒロインの気質が感情移入を拒むのかもしれない。
この作品を最後まで楽しむにはアメリの心の冒険を優しく応援するような、ヤン・ティルセンの音楽の存在が要だ。何かを予感させるような、暗示しているような不思議な魅力のある音楽である。
ディープなパリを舞台に、奇抜なヒロイン、好奇心をくすぐる音楽、奇才といわれる監督のすべてが整っているからこそ、何度見ても楽しめるのだと思う。