styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

仏サンリスの街が舞台「セラフィーヌの庭」 感想

セラフィーヌの庭 [DVD]

サンリスのセラフィーヌ、純粋さゆえの苦しみ

フランス、パリから北部に40キロ、サンリスには中世の街がそっくり残っている。旧市街は、石畳の細い路地。そのサンリスを舞台にした映画が「セラフィーヌの庭」だ。

 

セラフィーヌは、20世紀の女性画家で、自然由来の顔料で絵を描いていた。作品でも、草花を使って色を出していく。その姿は、何かにとりつかれたようにも見える。

 

セラフィーヌは、家政婦として働く一方、自室では激しい情熱を持って一心不乱に創作活動をしている。純粋に作品に向かい表現し続ける彼女には狂気すら感じる。

 

そして、絵画を通じて人とのつながりが拡大していくが、そこには世俗の罠が待ち受けていた。純粋なセラフィーヌが不幸になっていく様は、見ていて苦しい。

 

アーティストとしての素晴らしい才能と、生きていくことへの不器用さが裏腹だ。精神病院に入れられてしまう結末は受け入れがたい部分もある。しかし、これは伝記、本当の話なのだ。

 

才能と狂気は紙一重で、アーティストは世俗的には不器用な生き方しかできないという破滅的な物語だが、舞台になるサンリスの中世から残る街並みや、セラフィーヌの力強い絵がストーリーを彩っている。

 

セラフィーヌを演じた、ヨランド・モローは「アメリ」や「冬の旅」、「ゲンズブールと女たち」にも出ている。どんな役でも味のある、欠かせない存在感のフランス女優だ。