styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

「ポンヌフの恋人」 もうじきパリ祭、花火のポンヌフを背景に 感想

レオス・カラックス監督 1991年 フランス 夏の夢のような映画 パリの歴史の始点、シテ島にかかる橋、ポンヌフ(新しい橋)を舞台に、運命的に心を通わせる男女の物語。 その日暮らしの大道芸人と、片目失明寸前の美術学生という破滅ギリギリラインの二人。暗…

ハネケ監督「愛、アムール」 夫婦のダンスはいつまでも続く 感想

ミヒャエル・ハネケ監督 2012年 オーストリア、フランス、ドイツ 最愛の人だから 話がこじれる 発作から半身麻痺の後遺症を残し、認知症を患っていく妻と、「もう入院はさせない」という約束をした夫の愛のストーリー。 見終わって、あまりの重苦しさに、息…

哀しい愛を抱えて クレール・ドゥニ 「ガーゴイル」 感想

愛は哀しい 非情な病に悩む二人 情事の際に発動するカンニバリズムを持つ病が、現代社会にあるとしたら…。 ヴァンパイアのように哀しい宿命を持つ、病に侵された男女のそれぞれの生き方を描いた問題作。 この病の持つ、愛するほどに愛せない苦しみ。 愛する…

「黒水仙」 高潔で禁欲的な尼僧界のスキャンダル 感想

ナルシシズムを感じる高潔さを憎む 水仙は神話のナルシスにも通じる、うぬぼれ屋のイメージがある花で毒もある。黒水仙なんてものは存在していないのだけれど、ブラックなイメージが全開の作品だ。 ヒマラヤの奥地の教会に赴任してきた尼僧たちが、孤独と宗…

フランス映画祭レポート 「ショコラ」 2016.6.26

「ショコラ!(仮題)」 Chocolat - Bande-annonce あらすじ 19世紀末、大衆芸能文化が花開くパリで大成功をおさめたサーカスの目玉、黒人と白人の道化師のコンビ。ショコラ(オマール・シイ)はこの黒人の道化師のことだ。 落ち目の道化師フティット(ジェ…

「フレンチなしあわせの見つけ方」 結婚してても恋しているのがフレンチ 感想

だから 結婚してる意味がある 誠実で気の合う夫(イヴァン・アタル)と、可愛い息子を持つ主人公(シャルロット・ゲンズブール)。自分の仕事も大切にして、何不自由ないパリの一家の日常を切り取った作品。 結婚していても、目移りすることはある。この作品…

包容力のある恋に癒される 「ナタリー」 感想

キラキラな恋人からダサい恋人へ 見た目は関係ない恋の引力 絵にかいたような美しい恋人同士が、パリのカフェで出会い、うらやましくなるような生活を送っている。 それが一転、突然の死別。という最悪の結末を迎える。この物語はそこから始まる。 感情を押…

「シェルブールの雨傘」 ドヌーヴの美声・美貌に酔う 感想

ドヌーヴの美しい額が初々しい フランス女優の大御所としての地位を不動に固めたカトリーヌ・ドヌーヴのうら若き21歳の時の作品が、代表作「シェルブールの雨傘」。ミシェル・ルグランの音楽をつけた、ジャック・ドゥミのテンポの良いミュージカル映画が面白…

「ランジェ公爵夫人」 踏み越えることのない垣根がもどかしい 感想

公爵夫人の優雅な誘惑 なんだろう、見終わった後の遠い目になるかんじ。 ジャンヌ・バリバールはたおやかで上品で、でもえげつない公爵夫人を見事に演じきっていた。そして、ギヨーム・ドパルデューの将軍も武骨で繊細で、また駄々っ子のようで最高だった。 …

「エコール」 見てはいけないものを見てしまった気分になる 感想

ルシール・アザリロヴィック監督 2004年 フランス マリオン・コティヤール出演 原題:Innocence(無垢)に込められた意味 日本名「エコール(学校)」の響きと原題「イノセンス(無垢)」ではとらえ方が異なる作品だ。 少女を集めて美しく育て上げる学校で起…

誘惑する眼差し メラニー・ロランの虜になる 「PARIS」 感想

いくつもの人生がそこにある、パリの群像 セドリック・クラピッシュが描く、パリを中心にした群像劇。いくつもの人生のリアルな痛みが交差する。 死に至る病を患う弟(ロマン・デュリス)を気遣う姉(ジュリエット・ビノシュ)を軸に展開するストーリーは、…

「まぼろし」 途方に暮れる妻シャーロット・ランプリングの美しい憂い 感想

熟年夫婦だからこその色香と淋しさ バカンスを過ごす海辺の別荘で、いつもの風景から当然消えた夫の姿。激しい動揺や取り乱した姿を晒し続けない妻の気丈な振る舞いが逆にリアルに感じる。 夫の替わりはいないと強く思う絆の深さが印象的なのはベッドシーン…

コクトー原作・メルヴィル監督 「恐るべき子供たち」 恐るべき姉の愛 感想

コクトーの美学を目の前に再現する ジャン・コクトーの作品「恐るべき子供たち」の映画版は、ヌーベルバーグのメルヴィルが監督した。コクトーの恋人が弟ポールを演じ、コクトー自身がナレーションをすることで、原作者との強い結びつきをアピールしている。…

「世界一美しいボルドーの秘密」 ワインは恋、ボトルはステータス❓ 感想

ワインは嗜好品なのか?芸術品なのか? 近年のグローバル化に中国資本が存在感を表わすにつれて、ボルドーワインをめぐる、世界市場の過剰反応が問題視されている。翻弄されるフランスのシャトーや生産者たちの声を拾いつつ、ワインのもつなみなみならない魔…

「ミッドナイトインパリ」 恋ってこんな風にしたい妄想が満載 感想

夢見がちな婚約者の見せる奇行 婚前旅行できた花の都パリ。成功した脚本家の婚約者(ギル)に資産家のお嬢様もなんとなく不思議なオーラを感じている様子。 そしてついに、馬車がギルを迎えに来て、憧れの古き良きパリへタイムスリップさせてしまう。パリが…

「プライドと偏見」 イギリス文学的大人の恋愛の世界にはまる 感想

美し過ぎる、イングランドの風景に再現された世界観 18世紀、女性の立場は低く、中流階級では娘が身分の高い男性に見染められることを望む父や母の姿がしばしばみられた。 その時代背景のなか、主人公のエリザベスは、見事、高貴なお方を射止めることに成功…

激しく、暗い、恋の映画 イザベル・アジャーニ 「カミーユ・クローデル」 感想

美し過ぎて怖い女優、若き日のイザベルアジャーニ演じる「カミーユ・クローデル」。不倫の恋の果てを描いた作品の感想です。

問題ガール?モノ言うイラン女子を描いたアニメ 「ペルセポリス」 感想

ヴェールで隠しきれないマルジのバイタリティー イランに生まれた女の子マルジは、リベラルで反体制的な親や祖母の影響で自由闊達に成長していた。快活で自分の意見をはっきり持っている彼女だったが、イラン王政が倒れ、その後の宗教的な政治によって人生を…

大人の魅力といえばこの女性、ファニー・アルダンの美 「日曜日が待ち遠しい!」 感想

フランソワ・トリュフォー監督 1983年 フランス ファニー・アルダン主演 トリュフォーの遺作、美人秘書ファニー・アルダンが活躍 セクシーな美脚、唇、でもどこか男性的で、女から見てもハンサムなファニー・アルダン。サスペンスで描けばクールでエロティッ…

「パリ、18区、夜。」 断片だけどつながっている大きなストーリー 感想

パリ北部、18区は移民の街 この作品は1993年に作られている。この前後にはイスラム教女性のスカーフ着用事件など移民政策における他文化に対する問題点が議論になっている。 パリ北部18区というと、バルベスやシャトールージュなどの地下鉄駅があり、アフリ…

「コーラス」 ジャン・バティスト・モニエの天使の歌声が聞きたくて 感想

学校一のワルからコーラスのソリストに ジェラール・ジニョ演じる教師が赴任した学校では、やんちゃ盛りの男の子たちが問題ばかり起こしている。中でも一番のワル、問題児モランジュ(ジャン・バティスト。モニエ)に手を焼く。 しかし、モランジュは天使の…

ミヒャエル・ハネケ監督 「ピアニスト」 見終わって傷つく 感想

貞淑な女教師と美形学生のいびつな恋 厳しい母親に管理されて大人になった女性が、お堅いピアノ教師になる。いわゆる毒母の影響で、女性としての成長を抑えられてしまった悲しい主人公をイザベル・ユペールが演じきっている。 その彼女を誘惑する男子学生を…

「鑑定士と顔のない依頼人」 過去から動き出した時間 感想

敏腕鑑定士の目を欺くなら 明らかに怪しい電話依頼を受けたオークションの腕利き鑑定士バージル。罠だとわかっていても、姿を見せない「顔のない依頼人」に憑かれるように惹かれていった。 広場恐怖症というパニック障害を持つ依頼人、クレアは実はブロンド…

感想 「風にそよぐ草」 感情があるから、人間らしい 

感情的な人間であり続ける 偶然が支配する小さな世界で起こるボーイミーツガールの物語が、初老の男女だとどうなるかが描かれた面白い作品。「風にそよぐ草」では、かたくななこだわりや、素直になれないところもリアルに描かれている。 特に印象的なのは、…

父・子の絆ができるまで 『ヴェルサイユの子』 感想

「ヴェルサイユの子」(原題 VERSAILLES) 2008年フランス ピエール・ショレール監督 母に捨てられた子どもと、一人の男が心を通わせていく。生き方を忘れた彼が、弱い命を守るために再び立ち上がる姿が美しい。 父なる者になっていく、一人の男 フランスの…

移民の子どもたちを描く「身をかわして」 感想

移民の子どもたちの日常を描く 主人公である移民の子が通う学校では、フランス文化を大切にした授業が行われている。発表会では、マリヴォーの演劇を行うことになるが、移民の子は興味があまり持てない様子。しかし、白人のフランス人の女の子と一緒に劇の練…

「イカとクジラ」ノア・バームバック監督の自伝的映画 感想

ノア・バームバック監督の自伝的作品「イカとクジラ」の感想。子どもにとって親は絶対的存在という時期がある。しかし、あるとき、親が完ぺきではないということに気づかされるタイミングがある…

仏サンリスの街が舞台「セラフィーヌの庭」 感想

サンリスのセラフィーヌ、純粋さゆえの苦しみ フランス、パリから北部に40キロ、サンリスには中世の街がそっくり残っている。旧市街は、石畳の細い路地。そのサンリスを舞台にした映画が「セラフィーヌの庭」だ。 セラフィーヌは、20世紀の女性画家で、自然…

ドキュメンタリー「キミの心のブラック・ピーター」 を見た

www.nhk.or.jp 子ども時代の思い出と差別 「日本賞」教育コンテンツ国際コンクール受賞作品として、テレビ放送を見た。 オランダでは、シンタクラース(聖ニコラス)を迎え入れるお祭がクリスマスシーズン到来とともに行われるそう。そのお供が顔を黒く塗っ…

「エディット・ピアフ 愛の賛歌」 歌姫の人生、光と影 感想

暗闇から響く歌声が耳から離れない 貴方の燃える手で、私をだきしめて…という、エディット・ピアフの「愛の賛歌」を翻訳した日本語の歌詞(岩谷時子作)は叙情的で詩的で美しい。本来は、もっとピアフの激情や生い立ちの厳しさを感じさせるような内容になっ…