styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

80年代ノスタルジーという安心感 「レネットとミラベル」 感想

レネットとミラベルの四つの冒険/コーヒーを飲んで (エリック・ロメール コレクション) [DVD]

 

mermaidfilms.co.jp

「レネットとミラベル」下高井戸シネマにて 2016.7.13.

色とりどりなフランスの80年代 

エリック・ロメール監督の「レネットとミラベル」1986年 はヌーベルバーグの流れをくむ4つの短編からなるオムニバス形式。

 

田舎の純朴なレネットと、都会的なパリジェンヌのミラベルが出会い心を通わせていく爽やかなストーリーで、田舎の場面が1編、街に移動してからが3編になる。

 

製作されたフランスの80年代は、ユーロビートのディスコ全盛期で都会的な若者文化が特徴だろう。全編80年代のカラフルな服装に目を奪われる。

 

田舎では草むらの中の赤いレインコート、パリの部屋のポップなカーテン、女詐欺師の青いコスチュームなど、画面が飽きることなく彩られている。

 

「ふるきよき」80年代ブームによせて

80年代というと、日本ではアイドルとかバブルとかのほほんとした風潮が思い起こされる。もちろん、その時代と前の時代には様々な葛藤や問題もあったのだろうけれど…。

 

ネット文化もなく、湾岸戦争も、日本の震災もまだ起こっていない時代は、今の混沌とした情勢から見たら、ちょっとしたエアポケットに見えるのかもしれない。

 

「レネットとミラベル」には、一時、平和だった時代を象徴するノスタルジーが満ちている。外国の女の子が普通に生きて、悩んで、友人とたわいのないおしゃべりをしている。幸福感のある映画だ。

 

一番好きなのは二人が出会う田舎編

「青の時間」をめぐる共通の体験を通して、友情が芽生える。秘密を共有することは、女子の絆を深めるということ、ロメール監督は見逃さない。感性の違う二人の女の子が、共有するのが全てが沈黙する完全に孤独な時間というのは、感傷的だ。

 

そして、映画を見ている私たちにもその時間を共有させている。今回は上映で見られたけれど、夜にDVDで見るのも良いかもしれない。

 

レネットという不思議な存在

レネットもミラベルもそれぞれにチャーミングで可愛い17歳。知的で美しい非の打ちどころのないミラベルと違い、レネットはオーラや主張が強い印象。

 

実際、レネット役のジョエル・ミケルは、女優業よりも作家としても画家としても活動するアーティストになっている。「レネットとミラベル」も演技というよりも、彼女のそのものの魅力がロメールの巧みな会話劇で引き出されている。

 

不思議すぎるレネットだけでは成り立たないところに、ミラベルがいる、この作品のバランスの良さだは完璧だ。

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