styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

「ランジェ公爵夫人」 踏み越えることのない垣根がもどかしい 感想

 

ランジェ公爵夫人 [DVD]

 

公爵夫人の優雅な誘惑

なんだろう、見終わった後の遠い目になるかんじ。

ジャンヌ・バリバールはたおやかで上品で、でもえげつない公爵夫人を見事に演じきっていた。そして、ギヨーム・ドパルデューの将軍も武骨で繊細で、また駄々っ子のようで最高だった。

 

壊れそうなものを大切にしようとして、木っ端みじんに壊してしまう。破滅的な二人の関係がイライラを募らせた。時に猛獣のように怒り狂う将軍の様子は、もう、こちらの気分を代弁してくれているかのように感じる。

 

長椅子に横たわり誘惑しているのに、それ以上近づくことを許さない公爵夫人のずるさ。背徳的な貴族の社会にいながら、けがれることを嫌うプライドの高さ。そして、愛する心を知った後の献身と狂気に魅せられてしまう。

 

19世紀の世界観を再現

オノレ・ド・バルザックフランス文学を原作にした作品である。この作家は貴族でもないのに○○ド○○を使っているように、階級社会に対して憧れと同時に批判的な精神も持っていたことが考えられる。自身も公爵夫人に恋心をいただいていたというので、リアリティと幻想が入り混じった内容になっている。

 

リヴィエットの「ランジェ公爵夫人」は、その作品を映像化しただけではなく世界観を素晴らしいロケーションで作り上げている。特に、最後の修道院のある島の風景とパイプオルガンの音楽、歌の響きは文学の世界の中に入ってしまったような錯覚を覚える。

 

物語に引き込まれ、映像の鮮明な美しさにタイムトリップしたような心地にさせてくれるかなりお気に入りの作品。これぞロマンティック(小説風)と思う。

 

※リヴェット作品ではおなじみのビュル・オジエが語る「ランジェ公爵夫人」の舞台裏。原作に忠実にといういつもと違う意気込みが感じられる。

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