styloの映画日記

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問題ガール?モノ言うイラン女子を描いたアニメ 「ペルセポリス」 感想

ペルセポリス [DVD]

ヴェールで隠しきれないマルジのバイタリティー

イランに生まれた女の子マルジは、リベラルで反体制的な親や祖母の影響で自由闊達に成長していた。快活で自分の意見をはっきり持っている彼女だったが、イラン王政が倒れ、その後の宗教的な政治によって人生を翻弄されてしまう。

 

閉鎖的なイランを逃れウイーンへ留学するが、西洋文化についていけず結果的に放蕩し失恋。失意からイランへ戻ってきた彼女だったが。彼女のさすらいの旅はさらに続いていく…。

 

イランの女性マンガ家でもあるマルジャン・サトラピ監督の半生をもとにしたというこの作品は、フランスで発表されたが、イスラム圏では大きく問題視されている。アニメーションは迫力のあるシンプルな絵が特徴的。

 

娘に幸せな人生をという普遍的な願い

娘には賢く、自立して意見を言えるようになってほしい。一方、周囲とうまくやっていくには女性的であること(ひかえめで貞淑なこと)も忘れないでほしい。この二つを求められる女の子の人生はどこでも大変だ。

 

特に、戒律の厳しいイスラム社会では社会的に存在が脅かされることもあるのかもしれない。しかし、ヨーロッパに渡ったマルジの人生も甘いものではなかったところが、共感できる点だ。どこに行っても辛いことはある、強く切り抜ける力が必要なんだと感じさせる。

 

女の子の親ならば、自分を大切にして、良い仲間やパートナーに恵まれる人生を歩んで欲しいというのは普遍的な願いになるだろう。しかし、時に政治がそれを許さないこともある。女性にとって本当に賢い生き方が何なのか、考えさせる作品だ。

 

豪華な声優の母子関係も注目

この作品では、祖母、母親、娘の理知的でロックな会話も魅力。その声優に大女優、ダニエル・ダリュー(祖母)カトリーヌ・ドヌーヴ(母)とその実の娘キアラ・マストロヤンニ(マルジ)が当たっている。ダニエル・ダリューはドヌーヴより一世代前のフランス大女優で、「ロシュフォールの恋人たち」でも母娘を演じている。

このキャスティングの豪華さが作品の格を上げているだろう。

 

www.afpbb.com 

 

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