styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

『エヴァ』悪女の魅力に揺さぶられる

エヴァ 2018
ブノワ•ジャコ監督
イザベル•ユペール、ギャスパー•ウリエル

エヴァ [DVD]

エヴァ [DVD]

  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2019/01/09

新人脚本家ベルトランが、フランス地方都市のアヌシーで出会った一人の娼婦、エヴァ
彼女のミステリアスな魅力に取り憑かれ、パリから何度もアナシー足を運ぶようになる。

徐々に正体が明かされて行く中で、いつの間にか恋に落ちているベルトランは、恋人との仲にも不協和音が流れ始める。初めは次回作のテーマにしようとしていた、娼婦が真実の恋に落ちるか、という問いかけの答えは…。

(以下ネタバレ含む感想)
嘘の中に見える真実
恋に落ちたのはベルトランだけではなく、エヴァもまたそうだった。それがわかるのは、レストランのシーン。
会話を楽しんでいるエヴァは、娼婦としてそこにいながら、本当の自分も見せている。
高級娼婦らしく、食べたいものを注文し、高価なワインも追加する。しかし、ベルトランが、酔ってしまうのを見て、ヤレヤレと見つめる視線には、優しさや、愛おしさが感じられる。
そして、ベルトランの恋人とコテージで対峙した時のショックを受けた表情。若くて美しく、清純な恋人と比較され、馬鹿にされたと思い怒りを見せる。
出所した夫に関係がバレて、ボコボコにされたベルトランへの最後のキス。一時でも心を奪われた相手への別れは手厳しく、でも、2度と会うことがないように、と、綺麗だった。

嘘ばかりの二人だけど、恋した時間だけは本物だった。その恋によって破滅したベルトランは、そもそも、商売相手の作品を盗んだ小悪党だったし、同情の余地はない。それでも、ラストシーンの、捨てられた犬のようなすがるような目つきは女心を揺さぶる。

嘘だらけの美男美女の、本物の恋は、嘘みたいに綺麗で忘れられない。最後には、ベルトランに同情し、心に傷を負ったような気持ちになる。エヴァの悪女ぶりに翻弄されるのは快感でもあるだろう。

最も印象的なシーンは、ベルトランがエヴァに、化粧をしていない方が良いと告白するシーン。美貌のイザベル・ユペール演じるエヴァが、化粧しないと自分は醜いと言った、その謙虚さ、健気さのギャップには、脱帽する。本当の自分を見せることは娼婦の仕事をするには辛かったのかもしれない。

娼婦も作家もあるいは女優も、虚構を生みそこに生きる者だから、その享楽と悲哀を感じる深い作品。

ジャンヌ•モローがエヴァを演じた『イヴの匂い』もぜひ見たい。