styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

アルモドバル監督「ジュリエッタ」 恋と愛と、後悔の半生を描く

 

ジュリエッタ [Blu-ray]
 

ジュリエッタ

監督 ペドロ・アルモドバル

主演 エマ・スアレス&アドリアーナ・ウガルデ

 ジュリエッタという一人の女性の半生を追った物語。恋をして家族を作り、そして死や別れを経験する。喜びもあれば後悔もある。誰にでも起こりうる人生の葛藤を、ジュリエッタの回想で追う。運命をあきらめなかったジュリエッタの強い意志が感動の最後につながる・。

 

ジュリエッタの特別な点は、美貌とアンバランスな繊細な心。強い自責の念を感じるまじめな性格。若いころのファッションは過激だけれど、古典の教師ということもあり、進は保守的な部分がある。

物語には、ナンパされかかった男が自殺したり、恋をした相手の妻が亡くなったり、初めから死のにおいがまとわりついている。ついには、夫も漁に出て帰らぬ人になってしまう。

 

 

最愛の娘との関係においても、夫の死後どんどんおかしくなっていく。娘に感情をぶつけるべき場面で、自分の殻にとじこもってしまう。娘が自分の感情のやり場を失い、親友に依存していくことにも気づかないまま。

 

また、自分の両親への、申し訳なさも抱えている。母親の面倒を見られなかったことへの後悔。新しい伴侶を得た父へのいら立ち。血のつながった人間関係に、様々な後悔を抱えていく。

 

積み重なった後悔が象徴されるのが、娘のためのバースデーケーキを捨てるシーンだ。娘は父の死を語らない母親から、逃れるようにして失踪していた。

 

新しい人生を歩もうとしていたジュリエッタだったけれど、娘を忘れられるはずがなかった。そして、葛藤しながらも、二人がどん底の時期を過ごしたマドリードのマンションに戻る。

 

その選択が奇跡的だった。運命はこのマンションにあったのだろう。ケーキを捨てたつらい思い出に立ち返ることで、先につながる希望が生まれる。

 

つらい思い出がある場所に戻るのは勇気がいること。それでもそこで待つことが最良の選択だった。人生が流れる中、つらいこともあっればいいこともある。そういうめぐりあわせが描かれたアルモドバル監督の愛にあふれた作品。

 

若い時代のジュリエッタのあふれる魅力がアドリアーナ・ウガルデによって演じられている。作品の中では、次第に不穏な空気がながれるけれど、ジュリエッタの生命力あふれる笑顔を見ているだけで幸せになる。人生を俯瞰してみた時に、ここまで、おおらかにやさしい世界観が作れるのは親子の物語を描き続けた67歳のアルモドバル監督ならでは。