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styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

『恋多き女』 ゴージャスな美貌と強い意志を持つバーグマン

恋多き女 Blu-ray

 

恋多き女』Elena et les hommes ジャン・ルノワール監督 1956年 イングリット・バーグマン ジャン・マレー メル・ファーラー 

 

女神は使命の恋を重ねる

ジャン・ルノワール監督の後期の作品『恋多き女』は、パリの社交界を舞台に男性を次々に虜にしていく未亡人の恋愛喜劇。

未亡人エレナ演じる主演のイングリット・バーグマンの絶対的な存在感に支配されている。イブニングドレスや毛皮が似合うゴージャスな体型とブロンドの豊かな髪が画面にあふれ、豪華絢爛。ルノワールの作るカラフルな画面に映える。

 ルノワールによるところの「現実離れした」演技で周囲を巻き込むバーグマンは超人的だ。※1.練られたストーリーも魅力的だけれど、バーグマンの存在感だけで何の話か忘れてしまう。あー、また恋に落ちちゃったな(男性が)という具合。

物語の中で、エレナはあげまん気質で、恋人になった男性はみな成功する。それをわかっていて、男性との恋は、相手に与えるための儀式になり、あたかも女神さまのような境地に立っている。彫刻のような顔だちの ジャン・マレー演じる将軍の登場に目を奪われ、あっという間に過ぎていく時間。

最後は、エレナが恋の女神から、一人の女に戻る決断が描かれる。最後の選択は恋多き女が自分の幸せをつかむ、ハッピーエンドに向かっていく。

 

予定調和ではなく、ドタバタしている中でつかんだ幸せという、リアリティが練りこまれている。

※1『ジャンルノワール自伝』西本晃二訳 みすず書房 p340より

恋多き女』は不幸な悪女ではない

上品な顔立ちと、まっすぐな瞳から聖女といわれた女優としてのキャリアを一変させるスキャンダラスな事件を起こす。イングリット・バーグマンの実人生では、幾つもの恋が報じられ、恋多き女という、悪女のレッテルを張られてしまう。

しかし、映画『イングリット・バーグマン 愛に生きた女優』※2では、恋と愛、家族に支えられ、ブレない軸を中心にしていた様子がみられる。

 

女優としてのキャリアの絶頂で、イタリア映画の巨匠ロベルト・ロッセリーニと不倫関係に陥り、夫と子供を捨てた悪い母親としてバッシングされる。

それでも、彼との子どもを3人設けた彼女は満ち足りた表情で映像に残されている。世間に卑屈になるのではなく、強いまなざしで自分の道を歩いていく姿が印象深い。

愛のあり方、生き様に対して、外野が口を挿むことのできない信仰に似た信念が見える。軽々しい不倫論ではなく、一人の生き方として、語られる伝説の女優の逸話になった。何よりも笑顔のフィルムが、幸せの作り方を教えてくれている。

 

1956年に製作された『恋多き女』は、ハリウッド復帰の年にあたる。ジャン・ルノワールの温かいまなざしが、恋に翻弄されながらも、自分を貫いたイングリット・バーグマンを包み込んでいる。愛に生きる姿が力強く美しい。

 

※2聖女から悪女に堕ちた波乱の人生を負ったドキュメンタリー。作品の制作を子どもたちが熱望したというところに、女優としての母を誇りに思っていたことがうかがえる。

ingridbergman.jp