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styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

ヴィム・ヴェンダース 「誰のせいでもない」 試写会


巨匠ヴィム・ヴェンダース最新作『誰のせいでもない』11/12(土)公開

ヴィム・ヴェンダース監督 2015年フランス・カナダ・ドイツ・スウェーデンノルウェー

2016年11月6日 シネクイント 試写会にて

事故によって、運命が変わっていく被害者と加害者の生活が人生の中で交わる瞬間をとらえていく。淡々とした物語が、美しい映像と印象的な音楽でつづられる。

 

後悔しかない始まりからの展開

雪の日の事故、飛び出してきた子どもを死なせてしまった主人公と、子どもだけで遊ばせていた母親の後悔するシーンが作品の始まりだ。

どちらも、上手くいっていなかった人生にさらに大きな苦難が襲い掛かることになる。

 

しかし、主人公は小説家でこの体験をきっかけに身辺を整理し、新しく作品を生み出すことに成功する。後悔していることすら、糧にしていく姿が、遺族からどうとらえられるか、そもそもの人物設定も不安にさせる。そして物語は事故に合わなかったほうの子、クリストファーの成長とともに、サスペンスの色合いを帯びて展開していく。

事故だから?責められないモヤモヤ

この作品では、事故を起こした主人公を責めるシーンはない。警察だって彼を責めない。彼が責められるのは、身近な女性たちからで、それは事故とは関係ないことが主だ。

事故をきっかけに、恋人と別れ、小説を書き、新しい家庭を手にする。主人公の人生は事故が中心になっているようだが、女性に責められるのは感情を見せない性格ゆえのことばかり。

残された家族にすら事故について直接責められることはない。一方、事故の小説で成功したことをクリストファーに責められ、クリストファーに会わないことで母親に責められる。これも人間性に関するポイントだ。

 事故について責めるシーンがないことで、見ている側の感情のやり場に困る。主人公が自分を責めているのかも、あまり実感できないところに、見ていて苛立ちを感じた。

なぜかと問うても、答えはない

なぜ事故は起きるのか?不注意が原因なのか、気候のせいか、めぐりあわせか。あの時本を読んでいなければ、もっと早くに子どもを家に入れておけばという母親の問いかけに応えられる人はいないだろう。

答えのない問いを抱えている母親に対して、その問いを小説に昇華させながら成功を手にしていく主人公。一方は家を売り、一方は家を買うという経済的な対比も気になる。

主人公が時折嫌がっている、耳につくハエの飛ぶ音が唯一、逃れられないトラウマの象徴といえるだろう。

起きてしまった事故に対して、なぜあの時と、問うことは意味がないかのような展開に終始している。

全てうまくいく、誰のせいでもないというむなしい呪文を唱えながらも、歩み続ける姿が美しい映像で描かれている。

 

※今回は2D上映だったけれど、3D上映もあります。ヴェンダースの新境地が映像で楽しめるそうです。

 http://www.transformer.co.jp/m/darenai/