ブニュエル×ダリ 「アンダルシアの犬」 嫌なものは嫌だ(見たい) 感想
好奇心は怪我のもと
「アンダルシアの犬」はシュールレアリストであり、映画監督ルイス・ブニュエルの金字塔。シュールレアリスムといえば、サルバートール・ダリの方が一般的に知名度は高いだろう。
その二人が協力してできたこの作品は、おそらく見た人を必ずと言っていいほど嫌な気持ちにさせる。
まず、アンダルシア+犬 その組み合わせは何だろうという好奇心を持たせる。そこから見ようと思うかどうかは人それぞれだけれど、1928年という年代からもわかるように、今のような流暢な映画の構成は期待できない。
そのうえ、超現実的(現実にはあり得ないような想像力と自由な発想の実験)な作品ということで、手にとる人は少ないかもしれない。今の時代ならもっと巧妙で、ショッキングで、度肝を抜くような作品もいくらでもある。
しかし、一度見ると一生忘れられない映像体験をするならこれがおすすめだ。
嫌悪感をたっぷりと
この作品が白黒、実験、シュールレアリスム、ブニュエル&ダリという条件を抜きにしても、見た人に絶対約束されているのが嫌悪感。
有名なシーンに女性の瞳をカミソリで切るシーンがある。実際は牛の眼球という話も聞いたことがあるけれど、この挑発的でサディスティックなシーンは、映画を「見ている」私たちを攻撃している。
それと同時に、どんな映像も作り物で、私たちとは関係のない世界なんだという冷ややかなメッセージも感じる。
私は映画の世界観に浸るのが好きだから、すごく、嫌なシーンだと思う。
他にも「わき毛」のシーンや「あり」のシーンなど、不快な映像が連なっている。わたしたちにはちょっと分かり難いけれど、キリスト教を冒涜するシーンも注目だ。
見たいと思うかどうか、お任せするが、ちょっとみてみて、とにっこり笑っておすすめしてみたい。
見る前と後では、映画との付き合い方も変わる「実験映画」。芸術の秋にぜひ。