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styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

「NTL フランケンシュタイン」 孤独と愛に苦悩する二人の主役 舞台の上映レポート

映画館 好きな俳優 作品 感想 ベネディクト・カンバーバッチ

www.ntlive.jp

 

2016年8月28日 Bunkamura ル・シネマにて

ベネディクト・カンバーバッチ=博士

ジョニー・リー・ミラー=怪物

カメラを通して見る舞台「フランケンシュタイン

ナショナル・シアター・ライブの迫力が映画館で味わえるというのでロンドンに行くのはリソースが足りない身としてはありがたい企画だ。

 

初めにナショナルシアターの歴史を簡単に紹介し、その後、フランケンシュタインについての予備知識が与えられる。フランケンシュタインは怪物の名前かと思っていたが誤解で、博士の名前。怪物は名前すら付けてもらっていない。

 

舞台の映像化の利点として、俳優の表情が間近で見られ、空間が一瞬で切り替わる舞台装置の動きや、全体像が俯瞰で見られるのも、良かった。

 

ダニーボイル演出で音楽はアンダーワールドといえば「トレインスポッティング」のコンビ。得意なテクノと融合したテンポのいい演出が見られる。ゴシックホラーの「フランケンシュタイン」が重々しくならなず、時々笑いがでるようなモダンな舞台として楽しめる。

 

グロテスクでユーモラスなフランケンシュタインに引き込まれる

本編が始まると舞台に取り付けられた異様な装置から現れたのは、ジョニー・リー・ミラー扮する怪物。異様な動きと、異様な声に緊張が走る。

 

ジョニー・リー・ミラーは怪物の演技に2歳の息子の様子を参考にしたと言っていたけれど、新生児から立ち上がって歩き出す子どもの発達に要素を取り入れていたのだろうか。どこか幼さの感じられる挙動はフランケンシュタインの無垢さを感じさせる。

 

本来心の優しい怪物は創造主に捨てられ、世間に捨てられ、恩師からも(実際はその家族)捨てられてしまう。復讐することしか生きる原動力にできない哀れな存在。

 

対照的に、創造主であるフランケンシュタイン博士は人の心を顧みないエゴイストで、ベンディクト・カンバーバッチが演じている。冷酷な心には、神の手を持つという傲慢な野心が宿っている。

 

この対照的な2つの存在が、ぶつかりながら恐ろしいストーリーが繰り広げられる。

 

心ない科学者+心ある怪物の悲劇

冷血だった博士はフランケンシュタインの苦しみを通じて、自分が与えてきた周囲への不誠実さを顧みるようになる。フィアンセとの関係が少しづつ変わっていくのは愛に気づいた証拠だ。

 

しかし、博士も怪物も、誰かに必要とされる「愛」をめぐって大きな間違いを犯した。結果的に周囲を不幸に陥れながら、爆走する二人はどちらもモンスターになってしまう。

 

不遜になり間違った実験を行ってしまったのは彼が孤独だったせいでもある。その罰を受けながら、同時に強いつながりを持つ相手を得た喜びを感じているようだ。二人の孤独な男が長い旅に出るという新しいフランケンシュタイン像が見られた。

 

W主演の二人が競い合うように、お互いの解釈をぶつけるという前置きがあり、この作品は主演の役が交代する2パターンがある。カンバーバッチが演じる怪物バージョンも見てみたいと思った。またの機会を期待する。

 

フランケンシュタイン (新潮文庫)