木々を揺らす強い風と夏の日差し ジャン・ルノワール「草上の昼食」
おおらかに自然に包まれる夏の午後
マネの「草上の昼食」と同名の映画作品は、夏に見るのにふさわしい。
絵画のような映画の中でも、特に映像であることに意味のある作品だ。画家の息子であるジャン・ルノワールだからなせる画面構成は動く絵画のよう。
それだけでなく、一人一人に個性があり、マネの怜悧とも思える現実的な画風よりもずっと、人間味があるジャンの父オーギュスト・ルノワールを多く引き継いでいるように感じる。
特に、水浴びする裸婦像を思わせる輝きがまばゆい。
ストーリーは、あまり問題ではなく、溌溂とした若い女の子の肉体が自然のなかに動いているところを見るための映画だ。演出されたエロティックではなく、自然でおおらかな様子がすがすがしい。
強い風が吹いて木々が揺れる。そこにいる人たちの心も揺れる。見ている方もちょっとざわざわするような。そういうちょっとした日常が描かれているのではないかと思う。夏の日差しと、明るい笑い声が印象に残る素敵な作品。
※エドゥアール・マネ「草上の昼食」
※オーギュスト・ルノワール「もたれる裸婦」
※ルノワールの作品を生で見るなら8月22日まで