「悲しみよ こんにちは」 サガン名作を読む・見る夏に 感想
海に持っていきたい本
「悲しみよ こんにちは」フランソワーズ・サガン作
コートダジュールでバカンスを過ごす、ブルジョワたちのひと夏を描く。
恋愛にただ現を抜かすことのできないのがパリジェンヌ。17歳のセシルが新しい感情と出会う葛藤が、小さな出来事の連続で語られている。
大人の世界への憧れと、人の心の不条理に気づいた少女の鋭い視線が描かれた夏の名作。河野万里子さんの新訳はテンポがよいので読みやすく、海へ文庫を持っていくならこれがおすすめ。
映画版 セシルカットのジーン・セバーグ
「悲しみよこんにちは」1957年 のオットー・プレミンジャー監督作品。
ジーン・セバーグを発掘したことで有名な作品。原作から脚色されているけれど、17歳の少女の葛藤はきちんと描かれている。
セシル役ジーン・セバーグの表情のアップが美しい。海のある風景も美しい。父親のデビット・ニーブンと浜辺を歩くシーンは文句のない美しきブルジョワのバカンス。
(アメリカイギリス合作のため、主役はフランス人ではないけれど)
父親の再婚相手になる、アンヌ役のデボラ・カーも美しい。セシルは美しくて知性溢れるアンヌに憧れながらも激しい嫉妬を抱くようになる。
セシル、父親、アンヌと、立ち位置が変わろうとする中、少女の残酷な悪戯が暴走する。
無垢な表情の少女が自分の中の残酷さに出会う戸惑いが際立っている。無垢さと残酷さ、このアンビバレントな共存がジーン・セバーグの「勝手にしやがれ」に続くテーマだと思う。
※サガン自身を知りたいならこちらがおすすめ。
これぞ知的ブルジョワの退廃的なアンニュイの世界。 その中にいながら外側から見つめるような客観的な目を持っているのが、サガンの魅力かと。