「ムード・インディゴ~うたかたの日々」 幸か不幸か、美しきロマンスの夢 感想
お祭の後のような悲しさが良い
ミュージックビデオ風の映像の遊びも多く、ちょっと疲れるときもあったけれど、全体的に見て良かったという幸福感を感じられる作品だ。
この作品を見て、ミッシェル・ゴンドリーはただの夢想家ではないと確信。
「エターナルサンシャイン」でも、「恋愛睡眠のすすめ」でも、見られないくらいの悲しさやむなしさを感じさせてくれる。
映像の奇抜さと物語の悲しさのアンバランスに引き込まれる。幸せなら幸せなほど、裏側に潜む影が怖くなる。作品でも大きな影が妻のもとに駆け付ける夫を追ってくるシーンは象徴的だ。
ボリズ・ヴィアン「うたかたの日々」の映像化
アニエス・ヴァルダが僕に言ったことを思い出す。「いい映画を撮ってくれるように願うわ。だってみんな、あの本が大好きだもの」。
変わるのは物であって人じゃない─ゴンドリー監督が『ムード・インディゴ』に託したもの|ボリス・ヴィアン『うたかたの日々』を映画化、その想像力の源泉について聞く - 骰子の眼 - webDICE より
原作を読んでいないので、言及できないけれど、多くの人があがめる恋愛小説を映像化するのは勇気のいることだ。ここで、ミシェル・ゴンドリーが大きなプレッシャーの中仕事をしていたことが分かる。
私は原作に忠実に作ることよりも、原作のイメージを持っていない人が見て、一つの作品として飛躍なく完成していることの方が重要だと思う。
どの登場人物も活き活きとしていて、それぞれの人らしく、物語にのせられるのではなく、自分たちで物語っていくところがとても気に入った。
オドレイ・トゥトゥ、ロマン・デュリス、オマール・シイ…。この三人がピックニックをしている一番幸せで、一番不幸な場面が大好きだ。
過去の思い出を胸に、睡蓮のように眠る
結婚して、その先にどんな不幸が待っているとしても、二人の過去の一番美しい思い出は宝物なんだと思う。それぞれの想いは違ってしまっても、一番美しい日々は結晶のように残っていくということを最後に登場したネズミちゃんが教えてくれる。
その思い出を胸に、ついに永遠の眠りについた妻の気持ちを失意の夫にいつか知ってほしいと思う。救いのないストーリーでも、救いを求めるなら、二人で初めてデートしたあの時を忘れないでいてほしいということだろう。
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※新作も登場します!www.cinemacafe.net