styloの映画日記

WEBライターによる映画の感想、コラムなど雑記ですが記していきます。

「シェルブールの雨傘」 ドヌーヴの美声・美貌に酔う 感想

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ドヌーヴの美しい額が初々しい

フランス女優の大御所としての地位を不動に固めたカトリーヌ・ドヌーヴのうら若き21歳の時の作品が、代表作「シェルブールの雨傘」。ミシェル・ルグランの音楽をつけた、ジャック・ドゥミのテンポの良いミュージカル映画が面白くないはずがない。

アルジェリア戦争へ向かう恋人ギイと別れるシーンの高揚感は絵になるし、音楽も心情に合っているし、否応なく高まる。

作品のなかでも、始めはただのうぶな娘だったジュヌヴィエーヴがどんどん成長し、女の表情になり、最後は母になっている。これは通常の二十歳そこらの娘が演じきれるようなものではなく、天才というしかない。

天才の片りんを見せながらも、いまのようなどっしりしたゴージャス感ではなく、どこかはかないフワフワした女の子の魅力も併せ持っている。この年頃の女性が持つ武器を上手に使い分ける、かなりの女子力の高さがうかがえる。

この自信ありげにあげたおでことリボンの可愛さは、コケティッシュを最大限に利用する女子ならではの必殺技のようなものではないだろうか。

「ギイ…」と囁く傷心のドヌーブが痛いほど愛らしい。

 

カトリーヌ・ドヌーヴという人のすばらしさ

フランス・パリといえば恋に恋する土地柄だと思っている。カトリーヌ・ドヌーヴも実生活でもかなり恋多き女であり、男女の関係に対しても一家言ある人である。

ただ男性に恋い焦がれるだけではなく、かつて人工妊娠中絶の問題と女性の権利を訴えたことでも有名で、社会に影響を与える活動もしている。自立したフランス女性の姿そのものなのだ。

さらに、映画人としてのプロ意識はすさまじく、ラース・フォン・トリアーに手紙を書いて工場のおばさん役を演じるなど、実力に甘んじない真摯な姿勢がすばらしい。

「神様メール」でも、物議を醸す役柄に挑戦している。女優であることを心から楽しみ、謳歌しているので、見ていて気持ちが良い。この先も永遠に新作に登場してほしいと願ってしまう。


映画『神様メール』予告編