コクトー原作・メルヴィル監督 「恐るべき子供たち」 恐るべき姉の愛 感想
コクトーの美学を目の前に再現する
ジャン・コクトーの作品「恐るべき子供たち」の映画版は、ヌーベルバーグのメルヴィルが監督した。コクトーの恋人が弟ポールを演じ、コクトー自身がナレーションをすることで、原作者との強い結びつきをアピールしている。
映像化によって、目鼻立ちの美しい姉エリザベートと弟ポールが気ままに部屋でくつろぐ様子は、何とも言えない耽美的な世界観だ。
弟が恋をしたり、結婚したり、大人になるための通過儀礼をしようとすると、全力を傾けて否定する姉のエゴは甚だしい。弟が離れようとするときのなんともいえない表情には狂気すら感じる。
身内を所有するような気持になるのはもちろん間違っているし悪だと思う。しかし、幼いころは身内は自分のものだと思っている人も多いだろう。そこから卒業するタイミングを失ってしまうとこういう悲劇が起こるのは想像に難くない。
弟の好きにはさせない一方、エリザベートは平気で資産家と結婚して相手が不審な死を遂げたりする。目的のためには手段を択ばない支配欲の強さは、彼女の容姿が美しい分恐ろしい。
物事をおもしろい、おもしろくないで判断する子どもの心を持って身体が大人になってしまったアンバランスさが、この作品の魅力だ。それを演じるエリザベートの横顔は印象的で惹きつけられる。