冬の旅 感想
アニエス・ヴァルダの「冬の旅」
寒さ・厳しさ・寂しさをありのままに放り出す
なぜ、どこから、なんのために?突然現れたバックパッカーの若い女が登場する。そして土の上に倒れ目を閉じる。
悲しみはなく、うすら寒い。映像の無機質なタッチがさらにそう思わせる。
ドラマのないこの作品は、ミステリアスですらなく、どうやって付き合えばよいのかわからない。見ているものを不安にさせる。
ドキュメンタリー番組のように淡々と時間が進んでいくが、とらえどころがなく、見ているとどんどん寂しさを覚える。しかし、それが忘れられなくなる作品だ。
こうやって行き倒れになって死ぬのだけは嫌だと思う一方、こんな風にすべてを捨て去り解き放たれるようになってみたいとも熱望する自分がいる。
孤独は美しい幻想で、それを生身で見た時には痛いくらいの寒さを感じるのだと教えてくれる作品。冬が終わろうとする季節に、冷たい空気がもっと身を引き締めていてほしいと名残惜しく思い出す。